シンガポールの代表的な景観と言えば、SMAPのCMで一躍有名となったマリーナ・ベイ・サンズから見えるスカイライン。
オフィス街の近代的で美しい建築物は、まさにその国の高度成長を象徴するかのようですよね。でもシンガポールの「第2のスカイライン」として、訪れる観光客を密かに驚かせているのは各地で所せましと連立するコンドミニアム(通称:コンド)。
多くの長期滞在者をシンガポールの虜にしているその理由とは一体何なのでしょうか?
今回は決してお金持ちとは言えない33歳のごくフツーの社会人が体験した、日本では考えられないシンガポールコンドでの豪華な暮らしをお伝えします!
そもそもコンドミニアムとは?
日本でも時々見かけるコンドミニアム。大学時代に友人と行った房総半島では、海沿いのちょっと古びたマンションがコンドミニアムとして貸し出されていました。お風呂やキッチンも普通のマンションと変わらず、自炊派の長期滞在者からは重宝されそうですよね。
さて、シンガポールのコンドミニアムはどんなものかといいますと
見た目は近代的な高層マンション
最近のコンドはものすごーくお洒落な外観ですが、中が狭め。古めのコンドは外装はちょっと味気なくても中がとにかく広い。3階建てで1棟しかない小ぶりなものもあれば、18階だてが10棟あるようなマンモスコンドもあります。基本鉄筋コンクリートで壁が薄いことはありません。
24時間セキュリティ
敷地内に入るために鍵が必要なところがほとんどです。ゲストの場合はガードハウス(セキュリティ事務所)で名前を記入し、訪問先の部屋番号を伝えなければいけないところも。
屋外プール
コンドによっては複数のプールを所有。ジャグジー付きプールがあるところもあります。ほぼ100%の確率で子供用の浅いプールも別にあります。プールサイドにはサンデッキとパラソル。最上階のペントハウスに住めば、プライベートプールがあることも。
屋内ジム
日本の会員制のジムにあるようなマシーンは一通り揃っています。エアコン付き。
BBQピット
予約は入居者しかできませんが、外部のお友達を呼んでも大丈夫です。鉄板を洗うのも炭を片づけるのも、コンドの清掃員がやってくれます!
テニス・バスケットコート
古めのコンドには結構あります。
地下駐車場完備
これも付いてます。
モデルハウス的内装
日本のように引っ越しに家具は持っていきませんので、基本は家具付き。冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、オーブンはまず付いています。コンドによってはベッド、洗浄機、テレビ、カーペット、その他諸々設置されている場合も。1DKから4DKくらいまでが主流です。
マスタールームとコモンルーム
日本で言う「号室」は「フラット」と呼ばれ、キッチンやリビングなどの共有スペースと、いくつかの部屋で構成されています。部屋には2タイプあり、部屋はプライベートだけどシャワー・トイレだけは共用なのが「コモンルーム」、シャワー・トイレも自室内にあるのが「マスタールーム」と呼ばれています。
ほとんどのマスタールームにはバスタブが付いていますが、それを除いても少なくとも8畳。コモンルームでも最低でも6畳分の広さはあります。シングルベッドはまず見ません。コモンルームでもワイドダブル以上なので歩くスペースがあまりなかったかも。マスタールームではクイーン以上が主流です。
ファンクション・ルーム
お誕生日会や会合などで使われる会議室的空間。飲食可。
子供用広場
すべてのコンドにあるわけではありませんが、ブランコや滑り台だけでも置いているところは多いですね。
メイドさん用の部屋とシャワー・トイレ
多くのシンガポール人、欧米人がメイドさんを雇っています。
インドネシアとフィリピンからの出稼ぎメイドさんがほとんどで、住み込みで子供の世話、犬の散歩、買い物、家事など多くの仕事をこなしています。
日本人はちょっと抵抗があるようで、知り合いの日本人にはメイドさんを雇っている方はいませんでしたが、本当にごく一般的な話です。メイドさんがいないお宅では、このメイドさん用エリアを倉庫として使っていたりします。
害虫駆除対策
デング熱対策として、月に一度は害虫駆除のための薬品散布がされていますので蚊がほとんどいません。
つまり、日本だったら確実に億ションでしょう、という見た目と施設・設備です。初めて内見に行ったときは内装もあまりに芸術的で、これが一般人の暮らしだとは到底信じられませんでした。
ヨガスペースがあるところまであるんですよ! ベランダはあったりなかったりしますが、ほぼ全面ガラス張りか窓が超デカい場合がほとんどなので、ベランダなしでも開放感抜群です。
常夏のシンガポールの太陽の下、サンデッキで本を読みながらうたた寝した日には、もうここはどこかのリゾートホテルか!と思えるほど優雅な暮らしを満喫できます。
また、家庭のゴミはキッチンエリアに備え付けのダッシュビンと呼ばれる長いトンネルに落とすだけなので、ゴミ出しという習慣がなくなります。
シンガポールには分別の文化がなく、なんでもダッシュビンにポイポイ。日本出身の私としては、生ごみはともかく、ガラス瓶でも段ボールでも入るなら何でもダッシュビンに捨ててしまうはどうかと思いましたが、慣れって怖いですね…。地下駐車場にあるリサイクルボックスまでちゃんと持ってきている日本人や欧米人を見かけては見習おうと思ったものです。
家賃って一体おいくら?
コンドには比較的豊かなシンガポール人だけでなく、会社に家賃を負担してもらっている多くの駐在員とその家族が居住しています。
これは紛れもない事実であって、私もシンガポールで働き始めた頃は絶対住むことはなかろう、というか、住みたくても住めないだろうと思っていました。
そもそも住むのにお金がかかる世界の都市ランキングでは日本に次いで第9位のシンガポール。その不動産価格の高騰っぷりは半端なく、悲鳴があがりますから!
まず、フラットを丸ごと自分で借りるのか、複数名でシェアして部屋を借りるのかで家賃が変わってきます。当然マスタールームの方が家賃も高くなります。また、築年数、立地、施設・設備によっても違いが出てきます。
私はシンガポールに住んだ5年間で3つのコンドでフラットシェアを経験しましたが、そのいずれもが3LDKで築2年~10年、地下鉄の駅かバス停から徒歩10分圏内の物件でした。
気になる実際のひと月の家賃はといいますと、
丸ごと借りる場合は3800~4500シンガポールドル(28~34万円)、
マスタールームで2000~2200ドル(14~16万円)、
コモンルームで1250~1500ドル(9~12万円)
といった感じでした。基本的にシェアする場合は、部屋代x部屋数=丸ごとの家賃になるような設定になっています。いや~、コンドの施設・設備へのアクセスを考慮しても本当にお高い! 練馬の2DKのアパートのような格安マンションに月12万で住んでいたことを考えると本当に高い。
でもフラットシェアに抵抗がなければコンド暮らしは夢ではありません!
私は現地採用だったので、駐在員のように会社が家賃を払ってくれることはありませんでしたし、シンガポールでの生活にかかる総費用みたいなものもまだ不明確だったので、かなり保守的なお財布管理をしていました。
でもやっぱり職場以外で頼れる友達が欲しかったんですよね。それにはシェアがよさそうだけど、もう27歳だしプライベートな空間は譲れない…ということでマスタールームに住み始めました。
当時の私の月給は約27万円でしたが、私の物欲のなさも手伝ってか充分やっていけてました。
話は逸れますが、日系企業ってホントに稼げないのを確信したのもこの頃でしたね。
一番最初に住んだコンドのフラットにはフランス人の女の子(コンサル)、イギリス人の女の子(英系銀行)が住んでいましたが、20代半ばで月給8,000ドル(約60万円)ですよ!
彼女たちは駐在員ではなく海外支社への完全転籍で、家賃補助が月給に上乗せされていたのですが、それでももらい過ぎだろ!と思いましたね。
2人とも寝る暇もないくらい働いてるわけでもなかったですし。まぁ本当はその半分にも満たない給与でサービス残業してる自分が悲しかったってだけですけどね…
コンドミニアム公害?
シンガポールで最も探すのが難しいもの…それは建設工事現場が近くないコンドかもしれません。
何を建てているのか? もちろん新しいコンドです! 引っ越した時には工事していなくても、空き地や古い家が近くにあれば、その日は突然やってきます。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッと朝から晩まで掘り続け、終わったと思ったらカンカンカンカン、ウィーンウィーンと別の工程が始まります。平日は朝8時頃から夜10時頃まで、土曜日も午前中は工事の許可が出ているようで、せっかく寝たくても寝ていられません。
私が住んだ最初のコンドでは、徒歩5分のところで病院まで入った大型複合施設兼コンドの建設が行われていました。
2件目のコンドでは、通りを挟んで向かい側の古い家が取り壊され、あれよあれよと地下に穴が。翌年完成のコンドの建設が始まりました。3件目では2か月毎にどこかのフラットでリフォームが行われていて、騒音だけでなく粉状になったコンクリート(?)みたいなものが窓から入ってきたんですよね。
そのうち慣れるだろうと思っていました。でもまったく慣れず、建設中は毎日のようにイライラしてました。でも現場作業員はみんな出稼ぎに来ているインド人です。
週末のリトルインディアを訪れれば、ATMで送金しようとする人々の長蛇の列が見られます。彼らは灼熱の太陽にも負けず、スコールにも負けず、ヘイズ(インドネシアで森を燃やすのに伴って発生し空気中に舞う白い有害物質)にも負けず、日・祝以外は朝から晩まで働くのです。
ワンルームのアパートに10人くらいで雑魚寝し、昼は木陰で満足とは言えない量の食事を取り、トラックの荷台に20人くらいがギューギュー詰めになってアパートへと送られていきます。修工すれば就労ビザも取り消しになるので、母国に帰るか、観光ビザ期間中に次のコンドが割り振られるのを願って待つかです。
こんな条件の仕事に文句がないはずないのにただ黙々と働く彼らの姿を見ているうちに、同情ではなくむしろ尊敬する気持ちが芽生えました。彼らなしではシンガポールに「第2のスカイライン」なんてなかったはずですから。
最後に
シンガポールには、コンド以外にもHDBと呼ばれる公営住宅があり、プールなどはありませんが家賃は安めです。
以前は共有スペースにゴミや靴が散乱するようなところが多かったのですが、最近ではコンド並みに美しいHDBも出来ていますので一考の価値ありですね。
どっぷりローカルな暮らしに漬かりたい方は、中心部から少し離れた一軒家で部屋を借りするのもいいと思います。でもシンガポールに住むならやっぱり一度はコンドを経験してみてください。きっと一生の思い出になること間違いなしです!
まとめ
1. そもそもコンドミニアムとは?
• 日本だったら確実に億ション
• 外観はもちろんのこと、施設・設備・内装においても芸術的で美しい
• 24時間体制のセキュリティで安心、子供用施設も豊富
• プール・ジム・BBQピットなど、日本ではリゾートホテル並み
2. 家賃って一体おいくら?
• シンガポールでは不動産価格が高騰
• フラット丸ごと賃貸で28~34万円、マスタールームで14~16万円、コモンルームで9~12万円
• 築年数、立地、施設・設備でも違いあり
• フラットシェアに抵抗がなければコンド暮らしは可能
• 駐在員なら家賃は会社負担なのでもちろん可能
3. コンドミニアム公害?
• 建設工事現場に近くないコンドを探すのは至難の業
• 平日は朝8時頃から夜10時頃まで、土曜日も午前中は工事
• 現場作業員は出稼ぎに来ているインド人、劣悪な条件のもとでも頑張る
• 彼らなしでシンガポールに「第2のスカイライン」は存在せず
Live your dream!
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