日本語教師は外国語を母語とする人に日本語を教える職業です。ただでさえ大変な”教える”というお仕事に加えて外国人が相手なので大変な事がたくさんあります。
今回はそんな大変な事の中から特に僕が大変だと思った事を書いて行きたいと思います。
日本基準で考えられない
はじめにも書きましたが日本語教師の相手は外国人です。なので日本人である私たちが考えている常識は通用しないと思った方がいいかもしれません。特に海外に行くと「郷に入っては郷に従え」のことわざのように、そちらの常識で考えなければならない事が多々ありました。
例えば、授業中に携帯電話で普通に話し始めるのは日常茶飯事のようなもので、よく注意をしていました。それでかは分かりませんが悪い事だと分かっているからか、それとも申し訳ないと思ってかは分かりませんが、小声で話してすぐに切るようにしてくれていました。
他にも、授業中の飲み食いは当たり前のようにしていました。飲み物を飲むくらいなら全く気にしませんが、ポテチチップスなどのスナック菓子を食べる学生もいて、音が出るようなものを食べている場合にはさすがに注意しました。ひどい時は休憩中にカップラーメンを買ってきて授業前に食べきれなかった学生がいたので、食べ終わるまで雑談をしながら待った事はあります。
また、勉強に対するもチベーションや取り組み方も異なっており、日本の学生のようにとりあえず聞くという態度はほとんどとる事がなく、興味がなくなると授業に出てこない、出てきても話しばかりするか携帯をいじっているかのどれかである事が多いように感じました。この辺りは赴任する国によっても変わってくるかもしれません。
それから、僕が教えていたタイでは時間にルーズな人が多く、いわゆる”南国時間”だったのではないでしょうか。5分程度の遅刻ならまだ許される方でしょう。
しかし、10〜30分も遅れてきて、悪びれもしないのには赴任当初、怒りを覚えました。しかし、タイに住んでいるうちに「そういうものなんだ」と割り切る事ができるようになり、怒る事はなくなったものの、注意する場面は何度かありました。それでもさすがに1時間遅れてきてしれっと授業を受けている時には怒りました。
日本に来る学生は基本的にまじめに勉強に取り組みます。
まれに自国での癖が直らず、よく遅刻してきたり、集中力が続かない学生は多く、しっかりと注意しておかないと日本で生活する場合には大変な事になってしまいます。
重要な書類を忘れてきたり、乗らなければならない飛行機に乗り遅れたり、といった例も聞いているので、しっかりと注意してあげましょう。
授業の進行を考えるのが大変
日本語教師は基本的に与えられた教科書通りには授業を進めません。進めても問題はないのですが、面白くなくなってしまうので、それぞれがオリジナルの指導案を作っています。
その授業の内容をしっかりと理解し、文法を分かりやすく理解してもらうための例文を1つの文法につき3つ程度用意します。
しかしながら、限られた言葉や文法の中で、どんな文章が作れるのか、試しに日本語教育で最もベーシックといってもいい『みんなの日本語』という教科書の第36課の可能になった表現の”〜ようになりました”の例文を1つ紹介しましょう。
・”私はタイ語が書けるようになりました。”
というように、名詞も動詞も制限された中で、文章を作らなければならないのです。(ちなみに、この文法は例文を作るのがかなり簡単な方です)
また、同じ文型でも違う意味になる文法があるので、そういった紛らわしいものが入り込まないように注意しなければなりません。例えば、
“(絵を描きながら)私は○○を書いています。”
と”私は日本に住んでいます。”
では同じ文型ですが、
前者は現在進行形、後者は状態を表しており意味が違いますよね?
このような文章による違いを意識しつつ、制限された言葉と文法でその日本語を教えるのは大変だったりもします。その人の母語で説明できると楽ですが、それでは習得し辛いというデータもあるようで、可能な限り日本語だけで指導するようにしています。
また、国内で教える場合には様々な国の学生が入り交じったクラスができるので、母語での指導はほぼ不可能と考えた方が良いかもしれません。
指導に使える語彙が学習し始めの頃はほとんどなく、文法なんて全くありませんからボディランゲージやイラストなどでその文を示す事がほとんどです。
語彙や文法が増えるほど文章の難易度も上がるのでつい日本語だけで説明しがちですが、逆に学生が分からなくなってしまうので、しっかりとした例文や問題などを用意し、感覚的に覚えさせる方が後から学生もその文法を使いやすいので、説明を必要としない、けれどスッと頭に入ってくるような授業の進め方が理想的です。
そんな授業内容を毎日指導しながら例文や問題を変えたりして改良して行かなければならないのがこの日本語教師という職業です。日々進行や例文に使えそうなネタを探して本やテレビを見るなど、常に”産みの苦しみ”と向き合っています。
お金の問題
都市部の常勤講師でも15万円/月というところもあるようで、ダブルワークは当たり前のような世界です。非常勤でいくつかの学校を掛け持ちするという手段もありますが、それでも生活するのに十分な収入を得る事はできないと思った方がいいです。
日本語教師は既婚の女性が多いですが、旦那さんの収入の他にもプラスαの収入としてはかなり高くなりますが、男性の、特に既婚の場合には家族を養って行くには非常に厳しいため、男性が非常に少ない世界でもあります。
しかし、その分男性がいると様々な意見や考え方などが出てくるため、学校によっては重宝される事も少なくありません。さて、これまでは学生や進行の事を書いてきましたが、これが日本語教師になって最も苦労する点かもしれません。はっきりと言ってしまうと日本語教師は基本的に儲かりません。
僕はタイのナコンパトムというところで常駐している唯一の日本人として専任の教師をしていました。借りていたアパートに日本人が10人ほど住んでおり、それぞれが別の会社で働いている人達で、その人達と交流がありました。
失礼を承知で収入を聞いたところ、僕よりもほとんどが3万バーツ以上も多くもらっており、正直に言って「あれ?」と思いました。
「これだけしんどい仕事なのに、僕はこれだけ!?」と感じましたが、これがまさに日本語教師の最も苦労する点ではないでしょうか。ただ、そんな僕の収入も同じ日本人同士で見ると少ないですが、タイ人からするとかなりもらっている方です。
なので半分だけ使ってあとは貯金して一時帰国のための費用にしたり、毎日の食事を豪華にしてみたりと、そんな使い方をしていました。赴任先の金銭感覚や物価にもよるかとは思いますが、特に東南アジアを始めとする海外であれば、十分に暮らしていける金額をもらう事はできると思っていいと思います。
ただし、念のためにしっかりとその国の物価を調べたり基本的な収入を見てから応募する事をお勧めします。
まとめ
・日本の常識で量ると授業が進まない事もあるので注意!
・海外の場合には時間にルーズな場合もあるので、受け入れる事も大事です。
・教科書のままの進行はしないので、準備が大変。
・ボディランゲージやイラストなど、使えるものは何でも使って授業を進めましょう。
・基本的に収入は少ないので、ダブルワークは覚悟しましょう。
・男性が少なく、重宝される事も多くあります。
・海外なら、問題なく生活できる収入を得られる場合がほとんどです。
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